かっこいいことに理由なんていらない。

彩の国さいたま芸術劇場 The Forsythe Company 2006 「Bプログラム」


フォーサイス初体験だったわけだけど、そのかっこよさにただ圧倒された。何を考えるわけでもなく、ただそのかっこよさに魅入るなんてそうそう体験できることではない。


“Clouds after Cranach"(Paet1)
十数人のダンサーが、音楽のない舞台で、武道の組み手のように、素早く絡まり合い、解けていく。聞こえるのは床のすれる音と、ダンサーの息づかいのみ。自由に踊っているように見えるけど、実際は緻密に計算されているのだろうその動きは、集団として重なることはなく、全体を見ようと思えば、個々のダンサーの動きは追えず、ダンサーを見れば、全体が見えない、そのジレンマに陥り、全てを見逃しはしないと観る側もどんどん集中力を増していく。かっこいい。


“7 to 10 Passages"
両側に並んだ机。それぞれに二人ずつ座り、なにやら議論を始める。奥からダンサーがとてもゆっくりと身体をねじり、くねらせながら、少しずつ進んでくる。その非常にゆっくりとした動きを制御するダンサーの身体能力が素晴らしい。これはやや退屈といえなくもないけれど、また違ったものが観られて、奥の深さを感じた。

“One Flat Thing,reproduced”
舞台奥から、ダンサーが後ろ手に机を持ち、前に突進してくる。十数台の机を並べ終わったら、その机の上で、間で、下で、踊り出す。これが抜群にかっこいい。それ以外にいいようがない。バラバラに激しく動くダンサーたち。観てるそばから、どんどんその動きは頭からこぼれていくけれど、全てを目に焼き付けようとただただ舞台を見つめていた。もっともっと観ていたいと思った。