Co.山田うん「ges」ゲス

吉祥寺シアターにて。


予想以上におもしろかった。
事前に情報はなく、観る前から別につまらないと思っていたわけではないにしても、時間が経つにつれてぐいぐい引き込まれていった。


舞台に積まれた長机。一人のダンサーが現れ、正座してお辞儀をする。結局、最後もお辞儀で終わるわけだが、この時間の切り取り方がまずよくて、観客の気持ちを静かに舞台に引き寄せ、その静かさを茶化すかのように奇妙で時にグロテスクなダンスが始まる。このお辞儀もまたダンスの一部なのだ。


長机を片づけ、机が積み上がっているように、ダンサーもまた積み上がってゆく。カエルのような昆虫のような動きから始まり、徐々に激しさを増していき、片づけた長机を、効果的に舞台にまた登場させ、その長机とうまく絡む、いや踊る。舞台の前後や左右に離れた何人かのダンサーの動きを時にシンクロ(6人いるダンサーの内、動きがシンクロするのが、そのうちの2人だけだったりする)させるのが、思いの外気持ちよく、観客の視線を一点に集中させない。観客の視線をよく意識していたと思う。中盤以降は激しさを増しながらも、奇妙な感じは健在で、最後まで飽きなかった。


正直最初はどうなるんだと不安にも思ったけれど、終わってみればかなり満足感を覚え、まだまだダンスは見始めだけれど、こんな楽しい気持ちになれるから、舞台を観るのはやめられないと麺屋武蔵虎洞でラーメンを食べながら、思うのだった。


この振付がどの程度のものなのか、当たり前なのか、そうでないのか、比較する対象や基準が自分の中のがもどかしい。焦ってもどうにもならないわけであるけれど、もっともっといろんなものを観ないと。観るの楽しいし。