小田中直樹『日本の個人主義』ちくま新書

自律(自ら立てた規範に従い、自らの力で行動する)は果たして可能なのか?
という問いを、大塚久雄の所説を中心に参照しながら、西洋経済史、ポスト近代思想、認知科学などの諸説を取り入れ、検討する。


自律することは良いことだと簡単にぼくなんかは考えてしまうけれど、実はそうでもないらしいことを、わかりやすく、前向きに検討する姿勢は語り口や著者近影のナイスな写真と相まってとても魅力的である。


特に脳科学や、認知科学の最新の成果を参考にする点は新鮮だった。その部分が多少浮いている気がしないでもないけれど、人文科学の分野もこれまでのような議論ではだんだん時代遅れにならざるを得ないほど、脳科学認知科学の分野が発展しているようだ。
この辺はぼくも勉強しなければ。


新書なので、物足りない面はあるが、その点は、
参考文献を利用して、自分で考えていかなければならないのだろう。


「自律する」という一見当たり前の問題を、「べき論」に陥ることをさけつつ、様々な点から検討するその著者のスタンスこそが自律に他ならない。


同じ著者の『ライブ・経済学の歴史』もオススメ。